最近ではキャッシュレスが進んでいますが、現金を使用する場合にアメリカでは高額紙幣の使用を拒否される場合が多くあります。また使用できたとしても必ず偽札チェックをされますがその実態について実体験を踏まえてまとめてみました。アメリカ旅行時の参考にして現地で慌てないように注意してください。
アメリカの高額紙幣使用拒否の実態
基本的な状況
多くの店舗が高額紙幣を拒否
- 50ドル札以上を受け付けない店舗が多数存在
- タクシー、小売店、レストランなど幅広い業種で拒否
- 一般的に使用可能なのは1ドル、5ドル、10ドル、20ドル札まで
- 「$100 Bills NOT ACCEPTED(100ドル札お断り)」の看板が店内に掲示されることが一般的
使用拒否の法的根拠
合法的な拒否権
- 米国財務省によると、私企業が米国通貨の受取を拒否することは合法
- 連邦法では現金受取を義務付ける法律は存在しない
- 各企業が独自の支払い政策を策定する権利がある
- バス会社がペニーでの運賃支払いを禁止するのと同様の原理
偽札問題の深刻さ
統計と実態
- 偽札の出現率:約4,000枚に1枚の割合
- 特に「スーパーダラー」と呼ばれる100ドル偽札は極めて精巧
- 2021年第1四半期だけで、シカゴで160万ドル、カリフォルニアで11万ドルの偽札が押収
被害の実態
- 偽札を受け取った事業者が全損失を負担
- 商品・サービス提供分も含めて完全な損失
- 銀行で偽札が発見されても、事業者への補償はなし
偽札チェックの方法と限界
偽札検出ペンによるチェック
- 偽札検出ペンにはヨウ素(ヨード)を含む液体が入っていて、紙幣に線を引くことで反応を見ます。
- 本物の紙幣には「布に近い特殊な紙(主にコットンとリネンの混合紙)」が使われており、ヨウ素と反応しません(インクが薄い茶色~透明になる)。
- 一方で、偽札はよく普通のコピー用紙などの木材ベースの紙に印刷されているため、ヨウ素とでんぷん質が反応して黒っぽく変色します。
偽札検出ペンの使用方法
- 紙幣の白地の部分(印刷の少ない場所)に軽く線を引く。
- インクの色を確認:
- 透明〜薄茶色 → 本物の可能性が高い
- 黒・濃茶色 → 偽札の可能性がある
従来の偽札検出ペンの問題
効果の限界
- 「漂白・改ざん技術」により偽札ペンでは検出不可能
- 本物の5ドル札を漂白して100ドル札に改ざんする手法が横行
- YouTubeや各種サイトで偽札ペンを無効化する方法が公開されている
推奨される偽札の検出方法
物理的特徴の確認
- 透かし:光にかざして確認
- セキュリティ・スレッド:紫外線で発光する糸
- 立体印刷:指で触って凹凸を感じる
- 色変化インク:角度により色が変わる
- マイクロプリンティング:各額面に特有の文字
紫外線ライトによる確認
- 5ドル札:青色に発光
- 10ドル札:オレンジ色に発光
- 20ドル札:緑色に発光
- 50ドル札:黄色に発光
- 100ドル札:赤色に発光
現場での対応
事業者の実際の対策
- 紫外線ライトの設置を警察が推奨
- 知らない客からの高額紙幣は受取拒否
- 常連客のみ高額紙幣を受け入れる店舗も存在
- レジに十分な釣り銭を用意できない理由も併用
旅行者への影響と対策
実用的なアドバイス
両替時の注意
- 日本での両替時に20ドル札以下のみをリクエスト
- 1ドル札を多めに用意(チップ用途)
- 50ドル・100ドル札を持参してしまった場合は大型店舗やホテルで小額紙幣に両替
支払い時の戦略
- 現金支払い前に使用可能な紙幣を確認
- カードが使えない店舗や最低使用金額制限に注意
- 「○○ドルのおつりをください」と伝えて20ドル札を使用
社会的背景
アメリカ社会の現金離れ
- 偽札問題により高額紙幣への不信が増大
- 電子決済の普及が加速
- 現金社会からの脱却が進行中
この状況は、日本の「現金への絶対的信頼」とは対照的で、アメリカ独特の社会問題として定着しています。旅行者は事前にこの事情を理解して準備することが重要ですね。