[旅行情報]プレッシャーを感じるアメリカの「手動ドアの押さえ文化、マナー」

日本ではホテル、レストラン、ショッピングモール等、どこでも自動ドアが一般的ですがアメリカでは大きなドアを手で押して入る手動式ドアが多くあります。そして、本人がドアーを開けて通過した後にだいたいの人が後ろを振り返って、後から来る人のために、ドアを手で押さえて待っていてくれる場面に多く出くわします。

アメリカの「手動ドア押さえ」文化の実態、距離感

日本とアメリカの決定的な違い

日本では2〜3メートル離れた人に対してドアを押さえるかどうか迷ってしまいがちですが、アメリカではこの距離なら間違いなく押さえて待っていてくれるとのことです。さらに驚くのは、日本では確実に手を離すような7〜8メートルも離れた距離からでも、場合によっては押さえて待っていてくれることがあり、日本人の感覚からするととても恐縮してしまい、早く通過しなければとプレッシャーを感じることもしばしばありました。

科学的に算出された「適切な距離」

この文化について真剣に研究した結果、いくつかの興味深い「基準」が提唱されています。

ハフィントンポストの14フィート理論

  • 14フィート(約4.3メートル)が礼儀正しいジェスチャーと、相手に歩く速度を変えさせる迷惑行為の境界線
  • 13フィート以内なら押さえる、15フィート以上なら押さえない 

ヴァッサー大学の20フィート理論

  • ドアが閉まるまでの平均時間:6.629秒
  • 20代の平均歩行速度:時速3.04マイル
  • 数学的計算の結果:20フィート(約6メートル)が理想的な距離

アメリカ流のドア押さえのマナー

押さえる側のマナー:

  • 遠い距離から来る人には「Take your time.(急がなくていいですよ)」
  • 荷物を持った人やベビーカーの人には「Let me get the door for you.」
  • 男性同士では「スイング・オープン」という方法も使う

押さえてもらう側のマナー:

  • 必ず「Thank you」は言う(言わないとその日の話題になってしまう)
  • 遠い距離から押さえてもらった場合は「Thank you so much」や「I appreciate that」
  • 気を遣わせたくない場合は「Don’t worry」「It’s ok」と言ってから「Thank you」

スイング・オープンとは

これは男性同士でドアを押さえる時に使われる特別な方法です。アメリカの男性文化に根ざした独特なマナーなんです。

通常のドア押さえ vs スイング・オープン

通常のドア押さえ:

  • ドアを開けて、手でしっかり押さえ続ける
  • 相手が通り過ぎるまで待つ
  • 主に異性間や、男性から女性に対して行う

スイング・オープン:

  • ドアを大げさな動作で勢いよく開ける
  • すぐに手を離す(押さえ続けない)
  • でも相手が通れるように、ドアが閉まるまでの数秒間の余裕を作る
  • 相手は半開きのドアを通り抜ける

なぜ男性同士でこの方法を使うのか?

HuffPostの記事によると、これは「変な男らしさ」に関係しています:

“Men don’t always like to hold the door open for other men. It’s a weird masculinity thing, like not crying in public or pretending we don’t watch Pitch Perfect every single time it’s on cable.”

(男性は他の男性のためにドアを押さえるのを好まないことがある。人前で泣かないとか、ケーブルテレビでピッチ・パーフェクトをやるたびに見ているのに見ていないふりをするのと同じような、変な男らしさの問題だ)

実際のスイング・オープンの流れ

  1. 誇張した動作でドアを開ける
  2. 即座に手を離す
  3. 後から来る男性に数秒の余裕を与える
  4. 相手は「Thanks, bro」というような軽いお礼とうなずきで応える

「Hey, life is hard, but we dudes are all in this together」(人生は大変だけど、俺たち男同士、みんなで頑張ろうぜ)という気持ちを表現する、とてもアメリカ的な男性文化の現れなんですね!

日本の男性文化とはまた違った、面白い社会的マナーだと思います。

ドア押さえの文化的背景

この習慣は単なるマナーを超えて、「人生は大変だけど、みんなで支え合っていこう」というメッセージを伝える重要な社会的コミュニケーションとして位置づけられています。そのため、お礼を言わない人は「自分を特別だと思っている」「基本的な人間の礼儀を理解していない」と厳しく判断される傾向があります。

ニューヨークのような歩行者の多い都市部では、この文化がより顕著に現れ、無言での親切は不気味に思われるため、「短く、聞こえる声で、さりげなく」言葉を交わすことが重要とされています。

この「かなり離れた場所からでも」ドアを押さえてくれる文化は、アメリカの個人主義と共同体意識が絶妙にバランスを取った、とても興味深い社会現象です。